12/08/2008

CAFE HIBINO NETWORK

 以前に自分と関わりのある日比野克彦氏のプロジェクトについて紹介したのだが、実はまだまだ他の日本各地で日比野氏のプロジェクトは進行している。

CAFE HIBINO NETWORK

プロジェクトの幅の広さと奥深さは日比野氏のバイタリティを表しているといえるが、それ以上にいろいろなプロジェクトでの人の繋がりの多さに驚かされる。
 アートというのは自己表現であって、外的な要因が作品制作に結びつくとしても制作の過程では自分の中で消化、解体、模索、検討、再構築という作業が行われるものだという認識があった。だからたとえ制作の途中で他者との関わりがあったとしても最終的には個人的な作品へ帰結するものではないかと考えてきた。
 だが日比野氏の活動を見ていると、常に作品の核としての日比野克彦がありながらも、必ずしも「日比野氏による作品」とは呼べないような共同作業の結果としての作品がある。むしろアート活動を通して人と繋がることに重点を置いているように感じられる。「アートってよくわからない」と感じていた人に「アートって楽しいんだ」と感じさせ、アートに親近感を抱くようになってもらうことがねらいと思われるのだ。

 ワークショップに参加すると実際はアートディレクターのプランに沿って行う‘作業’であったり他者との共同作業となり、自らのアート活動やアート体験と は捉えられないこともあるかもしれない。だがその経過で得られる刺激は自分の活動に回帰できるものが多くあると思われる。
 一般的に「アートを体験する」というと「作品」を観る、触れる、聴く、感じるといういわば受動的なこととして捉えられがちだ。だがワークショップに参加することで作品の制作に携わることこそが「アートを体験する」ことと捉えるならば、より体験者のイマジネーションが掻き立てられる経験となるはずである。個々の日々の活動の中にアートがあり、その中で生まれたものが作品となる。まさに日比野克彦氏のアートに対する姿勢であろう。

 またワークショップ形式とすることで、なかなか個人では取り組むことの難しいスケールの大きなアートイベントに取り組むこともできる。日比野氏は「みんなが考える『難しいけどできればいいなぁ』をみんなでできるようにしたい」と話すように、多くの人がもつベクトルを統合できれば大きなことができるというのはアートにおいても例外ではないのだろう。

 体験から得るものがあれば、自分の創作=アート活動に戻っていくこともあるだろう。日比野氏も「ひとりで(創作活動を)やっていると、大勢でやりたくなる。大勢でやると一人に戻りたくなる。」と話している。人と繋がること、人に伝えることにこそ、アートの原点があるのかもしれない。

0 件のコメント: